取材ノート 樋口佳苗編
樋口さんは、金沢市内の自宅で織物の仕事をされています。
樋口さんは、おっとりとしたしゃべり方とは裏腹に、
比較的奇抜な色の組み合わせや複雑な構造の作品ですが、不思議とやさしい雰囲気なのが魅力です。
さて、織物のイメージは、鶴の恩返しのように織り機に座って織っているものですが、
実は、それはほんの最後のごく一部に過ぎません。
その前にデザインや糸の長さや太さを決め、配色を考え、織り方を決め、
緻密な計算が必要とされます。
織物のデザインが決まったら、そこから織り機に糸をセットしていきます。
今、彼女がしているのが綜絖(そうこう)通しと呼ばれる
経糸(たていと)で織り方が決める、一つの核になる作業です。
内容はとても複雑で、とても説明しきれないので、会場で直接本人に聞いて下さい。
これら本当に地道な作業が8割です。織る作業は、樋口さんにとってご褒美なのだそう。
お気付きですか?織物用語の多くには、糸の字が入ります。
私は、そのことを聞いて人々の古くからの営みを強く、感じました。
今回の展示に向けて樋口さんより
私が考える”ちいさなおくりもの”は、物理的に小さいのではなく、自身に対するささやかなご褒美という意味で制作したいと思いました。
自分を大切にし、自分のために衣服を選び、毎日がんばる自分の身体を温かく包み込んであげましょう。
真摯な姿勢で創られたものを身に纏うと見る目が養われ、
日々の生活は豊かなものになっていくと信じています。